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加齢性難聴を放置するリスク

加齢性難聴は音の聞こえが悪くなるため、周りの方の言っていることが鮮明に聞き取れない、何度も聞き返さなくてはならないなど、コミュニケーション上の困難を伴います。また、テレビやラジオの音量が大きいことなどを周りの方から指摘されるなど、周囲との関係性においても多大なストレスを抱えることとなります。

  • とても話し好きだったのに、耳が聞こえにくくなってから話をしなくなった。
  • 聞きなおすことが億劫で、人と会いたがらなくなった。
  • 外出することを嫌がるようになった。
  • 家族でテレビで見ていても会話に入りにくそうである。

このような状況が著しくQOL(Quality of Life:生活の質)を下げる要因となることは容易に想像できます。

また、米国のジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、音の聞こえが悪くなることで、平衡感覚を維持することが難しくなるため、つまずきや転倒などのリスクが高まることがわかっています。難聴のある方は難聴がない方と比較して約3倍も転倒リスクが上昇すると言われています。
転倒により寝たきりになるなどの重篤な後遺症が残ったり、運の悪い場合は死亡されるケースもあり、非常に注意が必要です。

さらに、近年の研究では一見関連性のなさそうな認知症やうつ病にも難聴が深く関わっていることが明らかになってきました。米国のコロラド大学が行った研究から、難聴を放置した場合、認知症を発症するリスクは軽度の難聴では約2倍、中度の難聴では3倍、重度の難聴では約5倍と、健聴者に比べて非常に高くなることがわかっています。
脳の萎縮は誰しも年齢とともに進行しますが、難聴を放置した場合には萎縮が早期に進行することも明らかになっています。これは難聴により、脳に対して音による刺激や情報の伝達量が少なくなるために、神経細胞が弱ってしまうことが原因であると考えられています。
2017年にはAAIC(国際アルツハイマー病会議)で、「予防できる原因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がなされており、難聴が持つ認知症リスクの大きさがご理解いただけると思います。

このように難聴を放置した場合には非常に多くの健康リスクが増大すると言われています。人生100年時代と言われる昨今、健康で安全に老後の生活を送っていただくためにも、少しでも聞こえが悪くなったと思われたら、早期に検査を受けるようにしてください。

難聴の治療